2023/07/08
マーラーの交響曲は7番が一番好きで、次に3番、そしてこの4番をよく聴きます。(マーラー7番の記事はこちら)
マーラーの交響曲の中でも7番や3番は長大な交響曲ですが、4番は1番「巨人」とともに規模が小さいです。曲想も穏やかで優しいものなので、マーラーの弟子で指揮者のブルーノ・ワルターは、この曲を「天上の愛を夢見る牧歌である」と語っています。
1893年10月27日に第4楽章のみが「天上の生活」としてハンブルクで初演されましたが、このときはまだ交響曲として構想されていませんでした。全曲初演は1901年11月25日、ミュンヘンにて行われましたが、初演は不評で、多くの聴衆からブーイングが浴びせられたといいます。
歌詞に「子どもの魔法の角笛」を用いていることから、同様の歌詞を持つ2番、3番とともに、「角笛3部作」として括られることがあります。古典的な4楽章構成をとり、演奏時間は約55分です。私の若い頃には「大いなる喜びへの賛歌」という標題が付いていましたが、マーラー自身がこのような標題を付けたことはなく、今はこうした題名では呼ばれていないようです。
木管はほぼ3管編成。第4楽章のソプラノ独唱は、通常女声のソプラノで歌われるが、ボーイソプラノを起用する場合もあり、バーンスタインはアムステルダム・コンセルトヘボウ管弦楽団との録音でボーイソプラノを起用しています。私もバーンスタイン盤を聴いたことがありますが、ソプラノの方が合っていると思いました。
前述のワルターの言葉通り、第1楽章冒頭、チャンチャンチャンチャン…という鈴の音に乗って導入される第1主題から、きわめてメルヘンチックで、夢見るような美しいメロディーが続きます。第2楽章では長2度高く調弦したヴァイオリン・ソロが、おどけた旋律を演奏します。第3楽章は世にも美しい音楽。第4楽章はソプラノ独唱が天国の楽しさを歌います。
マーラーの作品中では小編成で演奏しやすかったのか、ワルター、クレンペラーなどの古い録音も多いです。
カラヤン指揮ベルリン・フィル
私が愛聴しているのは、ヘルベルト・フォン・カラヤン指揮ベルリン・フィルハーモニー管弦楽団、エディット・マティスのソプラノによるDG盤(1979年録音)です。
カラヤンはあまりマーラーを指揮していたとはいえないでしょう。それでもDGに4番、5番、6番、9番、「大地の歌」を録音していて、それぞれ評価も高いのは流石です。
私としては5番や6番など美しいのですが、やや圭角が取れすぎていて、やはり少し違和感があります。9番も美しいのですが、何か作りもののような感じが拭えず、今ひとつ好きにはなれませんでした。
ただこの4番は、作品自体がある意味で現実世界から離れたメルヘンの世界で遊んでいるような曲なので、このカラヤンの人工的な音楽の作り方がとてもマッチしていると思います。もう晩年に差し掛かった頃の、力の抜けた表現が特徴で、精緻なガラス製品を見るような室内楽的ともいえるベルリン・フィルの響きを生かして、まさにおとぎの国で遊ぶかのような名演を成し遂げています。
マティスも、いつもながらしっかりとした歌唱ながら、力の抜けた夢見るような感じも良く出ていて、素晴らしいです。
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プレヴィン指揮ピッツバーグ交響楽団
プレヴィンも決してマーラー指揮者ではありません。交響曲ではこの4番くらいしか演奏していないのではないかと記憶しています。しかしこの4番がその辺のマーラー指揮者がはだしで逃げ出すほどに素晴らしいのです。
プレヴィンもカラヤン同様、メルヘンチックな音楽を得意としています。メンデルスゾーンの「真夏の世の夢」の名演を知っている方なら、このマーラー4番との親和性も想像していただけると思います。
冒頭から、この曲の穏やかさ、面白さ、温かさ、茶目っ気、少しグロテスクなところなど、楽想をきわめて適切に描いています。他の曲を指揮するときと同様に、きわめて全うに楽譜を音にしているので、気をてらったようなところが皆無なのも好ましいです。
マーラーの曲はパッチワーク的なところがあるのですが、接続的な部分がとてもスムーズなのは、この指揮者の卓越した楽譜の理解と、オーケストラを操るテクニックのなせる業なのだと思います。
オーケストラはピッツバーグ交響楽団。アメリカのオーケストラとしてはドイツ風の音色を特徴とする楽団だけに、とても丁寧な温かい音が鳴っています。
第4楽章のソロは、ドイツ・リートの大御所、エリー・アメリングです。カラヤン盤のマティスも良かったですが、アメリングはさらに優しく、本当に天女に包み込まれるような素晴らしい歌を聞かせてくれます。
録音は1978年。アナログ末期のEMIらしい暖色系の音質です。
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