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モーツァルト ヴァイオリン、ヴィオラと管弦楽のための「協奏交響曲」の名盤~ベーム、ドホナーニ

time 2022/04/02

 モーツァルトの協奏交響曲(シンフォニア・コンチェルタンテ)といえば、ヴァイオリンとヴィオラを独奏とした曲(K.364)と、オーボエ、クラリネット、ホルン、ファゴットを独奏とした曲(K.297b)があります。

 独奏楽器がオーケストラと渡り合う協奏曲と性格が異なり、複数の独奏楽器がオーケストラと協調しつつ響きを作り上げていく協奏交響曲は、18世紀後半から19世紀初頭にかけて、急速に隆盛しました。マンハイムで誕生し、古典派盛期からロマン派初期にかけてパリを中心に流行し一世を風靡しましたが、やがていつしか衰退しました。

 バロック時代の合奏協奏曲に似ていますが、合奏協奏曲がソロの「コンチェルティーノ」とトゥッティ(合奏)の「リピエーノ」を同等に扱っているのに対し、協奏交響曲では独奏楽器により重要な役割が与えられているのが特徴と言えます。

 さて、モーツァルトのヴァイオリンとヴィオラの協奏交響曲変ホ長調K.364ですが、私はこの曲が大好きなのです。4管楽器の方の協奏交響曲も好きなのですが、今回はK.364の方を紹介します。

 第2楽章がハ短調で書かれていて、有名な主題なので、聴いたことのある人も多いかと思います。ですが、私が好きなのは第1楽章と第3楽章の明るい部分です。屈託のない明るく伸び伸びとした曲調がとても心地良く、冒頭楽章、オーケストラの導入が始まって、しばらくして遠くからヴァイオリンとヴィオラが近づいてくるところなど、聴いていてとても幸せな気分になります。

 独奏部分ももちろんですが、この時期のモーツァルトの協奏曲の中では、オーケストラ部がとても充実しているのも特徴ではないでしょうか。マンハイム・パリ旅行から帰った後で作曲されていることからも、「パリ交響曲」同様に、マンハイム楽派の大きなオーケストラから影響を受けているのではないかと推察されます。

 さて演奏ですが、カール・ベーム指揮ベルリン・フィルのDG盤が立派な響きで素晴らしいです。

 独奏はいずれもベルリン・フィル首席で、ヴァイオリンがトマス・ブランディス、ヴィオラがジュスト・カッポーネです。1964年の録音です。

 冒頭から、オーケストラの充実感が半端ありません。分厚過ぎると感じる人もいるかもしれませんが、私はベームのモーツァルト、特にこの時期にベルリン・フィルと録音した交響曲やセレナーデが大好きなので、違和感はありません。むしろ、オーケストレーションが充実しているこの曲などは、特にベームの響きが合っているように感じます。分厚い響きながら、各パートバランスは克明を極め、リズムもよく弾み、本当に素晴らしい指揮です。

 ヴァイオリンのブランディス、ヴィオラのカッポーネ、二人とも美音で出しゃばり過ぎることはなく、息の合った共演を繰り広げます。この曲の場合、私はソリストを起用するより、オケのメンバーが独奏を務める方が、なぜか性に合います。

 欲を言えば、下記のドホナーニ盤を聴いてしまうと、ややヴィオラが弱いかな、という気もしなくはないですが、それはない物ねだりというもので、まずは第一にお勧めしたい名盤だと思います。

  次にお勧めしたいのは、クリストフ・フォン・ドホナーニ指揮クリーヴランド管弦楽団のデッカ盤です。

 こちらも独奏はクリーヴランドの首席、ダニエル・マジェスケ(ヴァイオリン)とロバート・ヴァーノン(ヴィオラ)です。録音は1991年です。

 ドホナーニのモーツァルトというと、この録音と同時期にデッカに後期交響曲や管楽器のための協奏曲などを入れています。交響曲などは少しテンション低めに感じて、ドホナーニにしては比較的平凡な演奏という印象があるのですが、ここでは、ソリスト2人の超名演と相まって、素晴らしい演奏を繰り広げています。

 何より、独奏2人の息がぴったり合っていることに驚きます。アーティキュレーション、トリル、強弱など、すべてにおいて、ぴったり合っているのです。決して機械的に合っているのではなく、独奏部分ではそれぞれのソリストの意欲も感じられるところが素晴らしいと思います。

 マジェスケはマゼールやアシュケナージのR.シュトラウス「英雄の生涯」でソリストをしていたので素晴らしさは知っていましたが、ヴァーノンのヴィオラもまた劣らず素晴らしいです。この曲の場合、どうしてもヴィオラが弱いと感じることもあるのですが、この盤ではヴィオラが本当に対等に鳴っていて、そして、オーケストラもセル指揮のときよりも豊かさが際立っており、なかなかここまでバランスの取れた演奏はないのではないかと感じます。

 もう一つ、素晴らしい演奏がありますので、紹介します。アルミン・ジョルダン指揮、ローザンヌ室内管弦楽団。ピエール・アモイヤル(ヴァイオリン)、ジェラール・コセ(ヴィオラ)。1980年録音、エラート盤です。

 ヴィオラのジェラール・コセの70歳を記念してエラート録音を集成した2018年発売のBOXの中の1枚です。(下の写真左。右はオリジナル・ジャケット)

 コセは大好きなヴィオラ奏者です。1948年、フランスのトゥールーズ生まれ。パリ音楽院に学び、62年にヴィア・ノヴァ弦楽四重奏団の創設メンバーで加わります。その後、フリーとなり、ソロや室内楽で活躍しています。フォーレやブラームスの室内楽でメンバーとして加わったCDをいくつか聴いて、その豊かな音色とアンサンブルを引き締める巧みさに惹かれました。コセ自身「ヴィオラを弾くことは歌を歌うことを意味します。私は自分自身を歌います」と語っています。深く、甘い音色、ノスタルジックを感じる、余人をもって代えがたいヴィオラの音が最大の魅力です。

 ジョルダンの指揮がまず素晴らしい。小編成のオケですが、とても豊かに鳴らしきり、低弦の雄弁さなどほかではあまり聴けない充実した伴奏です。アモイヤルはハイフェッツの弟子ということですが、コセ同様、音色がとても美しく、この曲の持つギャラントな雰囲気を余すところなく伝えます。

 第2楽章も深刻になり過ぎることはありませんが、それだけに作品の持つ哀感が身に迫ります。そしてフィナーレでは両者の高音のカンタービレがまるで天を駆けるような爽快さをもたらします。

 

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