一気読み必至の小説です。私がこれまで読んだ小説の中でもかなり上位に入る面白さでした。この本を買ったのは、別の新潮文庫の本を読んだ後に(何だったか忘れましたが、たぶん海外のミステリー)、本の最後にある新刊紹介を眺めていて、「面白そうだな」と思ったのがきっかけです。
作者ロバーツの実体験を元にした小説です。物語は、主人公のオーストラリア人・リンジーが銀行強盗の罪で服役中に、刑務所を脱走し、インド・ムンバイ(ボンベイ)にたどり着くところから始まります。主人公がボンベイに着いたときの町中の描写からすでにインドに来ているかのような雰囲気にとらわれます。
主人公はそこでプラバカルというガイドに偶然会い、やがて2人は大親友となります。
「リン・シャンタラム」と名前を変えた主人公は、やがて裏社会のマフィアたちと付き合うようになり、スラムの家で暮らし始め、応急処置の経験を生かして無資格で医療所を開きます。徐々にスラムの人たちに受け入れらていきますが、彼を快く思わない者の陰謀で再び囚われの身になってしまいます。その後もソ連占領下のアフガニスタンに向かいゲリラに加わったりと、どんどん主人公の波乱の人生が加速していきます。
登場する人物も、愛すべきキャラクターのプラバカルをはじめ、謎の女性カーラ、マフィアのボスのアブデル・カーデル・ハーン、主人公リンの兄貴分であるアブドゥル、カフェに集うヨーロッパから来た怪しい人々など、魅力的な人物が次から次へと出てきます。
インドの田舎、スラム、刑務所、アフガニスタンの山岳地帯と、舞台が次々と展開して、その土地のにおいが感じられる描写が巧みです。ストーリー展開も上手く、飽きさせません。登場人物たちがところどころで語る警句めいた言葉もまた印象的です。
麻薬や暴力のシーンなども出てくるので、そういうのが苦手な人には向きませんが、海外小説、ハードボイルド系が好きな人は手にとって見て損はないと思います。
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