フォンテックレーベルから、日本人指揮者・オーケストラによる全く新しいブルックナー演奏のCDが出ています。
小泉和裕指揮大阪センチュリー交響楽団のブルックナー 交響曲第1~3番、第4~6番のそれぞれ3枚組です。4~6番は2009年、1~3番は2012、13年の録音です。
最初に聴いたのは、もう10年近く前、NHK-FMで5番が流れたときです。時期的に、もしかしたらCDに収録されている演奏だったのかもしれません。曲の途中から放送をつけて何気なく聴いていたら、そのキレキレの演奏に「誰の演奏だろう?」と思って最後まで聴いてしまいました。演奏後のアナウンスで小泉の演奏だと知ってびっくりしました。
大阪センチュリー交響楽団(2011年4月に日本センチュリー交響楽団に改称)は中編成のオケです。ライナーノートのメンバー表を見ると、弦の人数は12、10、9、8、6でしょうか。ブルックナーは管楽器は大編成ですので、バランスが悪い気がします。ところがどうして、CDで聴く限り(FM放送の時も)バランスが悪いどころか、むしろこれが本来ブルックナーの意図した響きなのではないかと思うくらい、絶妙なバランスなのです。
小泉という人は、燕尾服の中に着る白シャツがフリルが付いたようなヒラヒラしたものを着て指揮をしている写真をよく見ていたので、何となく勝手に「大したことない」(失礼!)とずっと思い込んできました。東京都交響楽団のコンサートも多いのですが、一度も聴いたことがありませんでした。そしてブルックナーに情熱を傾けている人だということも、このCDを買って初めて知りました。
とにかく良く訓練されたオーケストラ、というのが第一印象です。個々人のレベルが非常に高い。そして小泉がバランスを完璧にコントロールしていて、室内楽的ともいえる緻密さがあります。静かなところから急にフォルティッシモになるようなところでも、音の立ち上がりが見事にそろっています。また壮大なクライマックスでも、よくありがちな絶叫型にはならず、何段階にも積み重なった音の層が迫ってくる感じ。4~6番の帯にはセッション・ライヴ録音と書かれているので、相当入念な録音作業だったのでしょう。
1~3番のCDのライナーノートに小泉自身が次のように書いています。
センチュリーオーケストラが一曲一曲ブルックナーに取り組んだ事で、オーケストラ音楽の重要な基本を体験し、この音楽の大切さやその真髄に触れる経験を重ねることができました。
今のような時代に、忘れられている心を取り戻す為に、是非聴いて頂きたいと思う音楽です。
その通りに、一曲ずつ丁寧に練習を重ねた跡がうかがえます。1音として手を抜いたところのない素晴らしい演奏です。小泉という人は、楽譜通りに演奏して、音楽自体に語らせる音楽家だったのだと認識できたのはうれしい体験でした。こういうタイプの指揮者は年を経るごとにとんでもない高みに昇っていくのではないかと期待しています。
残りの7~9番がなかなか発売されません。演奏されたのかどうかもわかりませんが、何とか全集化してほしいと思います。
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