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ウィーン風の典雅さと古典的な均整美~ヨーゼフ・クリップス指揮コンセルトヘボウのモーツァルト交響曲集

time 2022/02/26

 少し前にマーク指揮パドヴァのモーツァルトの交響曲を紹介しました。それとは少し趣は違うのですが、いつ聞いても「やはり良い演奏だな」と思うのが、ヨーゼフ・クリップス指揮 ロイヤル・コンセルトヘボウ管弦楽団のモーツァルトの交響曲集(フィリップス)です。タワーレコードの企画盤として2014年に7枚組BOXとして発売されたので、まだ廃盤にはなっていないと思います。  

 収録曲は、21~41番。37番はなしで、33番のリハーサルが付いています。録音は1972~73年です。録音データに場所が書いていないのですが、おそらくコンセルトヘボウでしょう。

 短期間に録音されているので、どの曲も録音の質が一定なのが良いです。そして、一聴して、アナログ完成期のフィリップスならではの録音の良さを感じます。ホールトーンを適度に取り入れトゥッティの豊かさを感じさせながら、各パートの分離も良く、コンサートホールのS席で聴いているような極上の音質です。決して最新録音にそん色のない、この音質でモーツァルトの交響曲が楽しめることが、まずこのCDの大きなメリットといえます。

 録音の良さに助けられたというわけでもないでしょうが、クリップスの演奏もとても魅力的です。この指揮者、私の印象では、廉価盤が多かったように思っていて、どうしても少し軽めに見ていたのですが、どうしてどうして、スケールの大きな、そして管弦打の非常にバランスのとれた、素晴らしい演奏です。この時期のヘボウですので、自発性を生かしたオケの巧さも特筆ものです。

 曲数が多いので、一つ一つは書きませんが、比較的中庸から遅めのテンポを取り、フレージングが克明を極めます。弦主体で豊かに歌わせながら、木管や金管も適度に鳴らし、とにかくすべてにおいてバランスが良いと感じます。

 一例だけ挙げれば、第40番ト短調の第1楽章。冒頭のヴィオラの刻みが実に克明、細心にバランスを整えているのがわかります。当然、第1ヴァイオリンの主題も、マークのように抑揚を付けるようなことはしません。それとはほとんど感じないほどのデュナーミクも、何気ないようで職人的なうまさを感じます。あざとさが一切ないと言いますか、そういう感じで全曲一貫しています。

 ジャケット写真にあるように、なんか田舎町の教頭先生のような冴えない風貌ですが、人は見かけによらないとはこのことですね。トータルでとても平均点の高い演奏です。アーノンクールのような刺激的で凄みのあるモーツァルトも好きですが、こういう真っ当なモーツァルトも、とても聴いていて心地良いものです。

 

 

 

 

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