「白い巨塔」や「華麗なる一族」で知られる国民的な大作家、山崎豊子さんの最後の未完の作品です。
第1部のみ完成し、文庫にもなりましたが、完成すれば、山崎さんの他の小説と同様に、大部のものになったようです。
巻末に第2部以降の構想(あらすじ)が書いてありますので、大体どのような姿になっていったのか想像できます。
物語は、潜水艦に勤務する若い自衛隊員が主人公です。第1部では、漁船との衝突事故に会い、海難審判の様子や、フルート奏者の女性との出会いなどが描かれます。
なにぶん序章的なところで終わってしまいますので、もどかしい思いもありますが、高齢になって体の痛みを訴えながらも関係各所への取材を重ね、ここまで書き上げた山崎さんの執念に頭が下がる思いがします。
国とは何か、国を守るとはどういうことか。第1部だけでも、山崎版「戦争と平和」となるべき大きな物語の片鱗を感じさせます。
構想によると、第2部以降では主人公の父親の太平洋戦争当時のエピソードが描かれるようでした。ヒロイン役のフルート奏者に加え、主人公に思いを寄せる食堂の娘、潜水艦の仲間たち、敵役の防衛庁の役人など、脇役も魅力的な人たちが登場していて、山崎さんの小説らしい、多彩な登場人物が登場し、いろんな人間模様が繰り広げられる予感がありました。
かえすがえすも、未完に終わったのが残念です。
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