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気付きの多い本でした 「生きる技法」 安冨歩著(青灯社)

50歳で「女性装」を始め、「身も心も自由にしてくれた」という東大教授の安冨歩さん。両親との決別、離婚により家族の呪縛から逃れ、この国の男性を息苦しくしているシステムに気付いたといいます。

著書も多く、マスコミにも多く登場して発言していますが、私が彼の本を読んだのは初めてです。終身雇用など戦後日本的価値観の崩壊、格差の拡大・定着…、何かと生きづらさを感じることの多い現代社会。安富さんの主張は特異なところもありますが、なるほどと頷けることも多かったです。

本書では数多くの命題を提示しながら、生きる技法を解説していきます。ありがちな抽象的な解説ではなく、安冨さん自身の人生経験を基にしているので具体的で読みやすいです。

私が「なるほどな」と思った命題は「誰とでも仲良くしてはいけない」です。少し長いですが引用します。

自分を人間として尊重してくれる人と、自分に押し付けをしてくる人とを、分け隔てせず、どちらとも同じように仲良くしようとすると、何が起きるでしょうか。押し付けをしてくる人は、あなたを利用しようと思っているのですから、

「友だちじゃないか」

「きみはこういう人だろ」

「きみは〇〇と言ったじゃないか」

といった手段によって、あなたに罪悪感を感じさせて、自分に都合のよいことをさせます。そうする一歩一歩、あなたの時間や能力や友人関係やお金や容姿など、あなたの生きるための資源を勝手に使われることになります。

それに対してあなたを尊重する人は、そういうことをしません。あなたを尊重する真の友だちたりうる人は、あなたが嫌だと思っていることをさせたりはしません。

どうです?ここだけを読むとかなり極端な意見のように思われるかもしれません。ですが、最初から順番に読んでいくと、なかなか含蓄の深い読み物になっていることがわかります。

その最初の命題1-1は「自立とは、多くの人に依存することである」。そして安冨さんはこれを「生きるための根本原理」と書いています。一見上に引用した文章と矛盾するように見えますが、その辺りがどう関係しているかは、読んでのお楽しみとさせてください。

正直、思ったところをズバズバ書いているので、少し過激かなと思う部分もありましたが、巷にあふれている読んだ後に何も残らない自己啓発本よりは、よほど面白かったです。いろんな理由で生きづらさを感じている人にとっては、人生や物事に対する見方を変えるヒントが得られることでしょう。

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keitoshu: 千葉県に住む男性です。好きなクラシック音楽や読書、食べ歩きの思い出などを書いていきます。