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青春の輝き ベートーヴェン「交響曲第2番」の名盤 モントゥー、セル、岩城

time 2017/10/17

1802年に完成したベートーヴェンの交響曲第2番ニ長調作品36は、ベートーヴェンの難聴が悪化して「ハイリゲンシュタットの遺書」が書かれた時期に作曲されていますが、作品に苦悩の影は見られません。明るく推進力のある曲想で、青年ベートーヴェンの生き生きした姿が垣間見える、実に幸せな曲です。

1番、2番はハイドンの影響下にあると言われますが、1番に比べてもはるかに後年のベートーヴェンらしさが出ています。ウィキペディアによれば、第1楽章序章の規模が拡大し重要性が増していること、動機労作がより緻密になり、ソナタ形式楽章におけるコーダが第二展開部としての様相を呈し始めていることなどが指摘されるとしています。また同じくウィキペディアによると、楽器法の面でも木管楽器(特にクラリネット)の活用やチェロとコントラバスを分割して扱う手法が顕著になっていることが注目されるとあります。

2004年の大晦日でしたか、故・岩城宏之さんが一晩でベートーヴェンの全交響曲を演奏する「振るマラソン」を聴いたのですが、そのとき岩城さんが「ベートーヴェンの交響曲はどれも傑作だが、第2の第2楽章は少し冗長に感じる」と話していたのが印象に残っています。私はこの楽章のデリケートな情緒は大好きですが、たしかに少し構成的に散漫な印象を受けていただけに、わが意を得たりと思いました。

この曲は学生時代によく聴きました。最初はモントゥーのコンサートホール盤で何回も聴き、シューリヒト、ベーム、ブリュッヘンなどいろいろな演奏を聴いて、比べたりもしましたが、どうしてもモントゥーに戻ってしまいます。

モントゥー指揮北ドイツ放送響

モントゥーはウィーン・フィルと1~8番をデッカに録音していて、その2番もなかなか良いのですが、1959年にコンサートホールレーベルに録音した北ドイツ放送響との演奏は、はるかに活気のある名演です。4番とのカップリングで、4番もなかなかです。

とにかく全曲一貫して伸びやかで健康的な演奏。各パートをくっきりと描き出し、オケの自発性を存分に引き出しています。テンポもリズムも実に的確で、まず申し分のない解釈です。北ドイツ放送響はどちらかというと暗い音色のオケだと思いますが、ここではラテン系の国のオケのように明るい響きを出しています。おしゃれ好きで社交的だった青年ベートーヴェンの姿がここにあります。

私が1990年頃に買ったデンオンのCDは、コンサートホール独特のくすんだ溶け合わない録音だったのですが、2013年にタワーレコードからリマスタリングされて発売されたものは、見違えるようにクリアな音質になりました。

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セル指揮クリーヴランド管弦楽団

ジョージ・セル指揮クリーヴランド管弦楽団(1964年、ソニー)は、定評ある名盤です。大編成のオーケストラを室内楽のように鳴らした演奏。やや速めのテンポ、切れ味のある和音、キビキビしたリズム、清潔なフレージング…と古典作品を演奏するのにまったく過不足のない、音楽的な名演だと思います。

そしてやはりオケが抜群に上手いですね。ソロ楽器も自己主張することなく均質性を持って鳴ります。まさに純度の高い室内楽を思わせるオーケストラ演奏です。

セルは前はやや冷たい印象を持っていたのですが、今聴いてみると、意外にロマンティックで熱いものもあった指揮者だったのだなあと思います。ベートーヴェン全集では交響曲も良いですが、「シュテファン王」序曲が、切れば血の出るようなライヴ感満載の名演奏で、びっくりしました。

 

George Szell Conducts Beethoven Symphonies & Overtures (Sony Classical Masters)

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岩城宏之指揮オーケストラ・アンサンブル金沢(ライヴ)

プライベート盤として発売されましたが、今は手に入らないようです。そんなCDを紹介するのは心苦しいのですが、演奏があまりにも素晴らしいのでぜひ書かせてもらいたいと思います。

1995年から1996年にかけて浜離宮朝日ホールで演奏された全曲演奏会のライヴ録音です。

特に1~3番、6番「田園」が日本の結成から間もないオケとは思えない、芳醇かつ技術的に安定した名演です。どの曲もかなり速めのテンポでさっそうと進みますが、細かいニュアンスが美しいので単調さとは無縁です。

第2は実演でもかゆいところに手が届くような演奏で、まるでセルが生き返って小編成のクリーヴランドを振ったのを聴くような満足感を覚えました。岩城さんという人は晩年、病気続きでしたが、この頃はまだ元気で、クラシックの王道といえるレパートリーでも、こんなに充実した演奏を繰り広げていたのでした。

上の方で、岩城さんが第2交響曲の第2楽章をあまり評価していなかったというエピソードを書いたのですが、実際に聴くとそんなことはなく、実に爽やかな演奏になっていて冗長さを感じません。でも、指揮をしながら内心では「この楽章、長いなあ」と岩城さんが思っていたかもしれないと推測すると、面白いです。

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