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読み通すのに苦労しました 中村文則著「教団X」(集英社文庫)

うーん、何と言うか、評する言葉を探すのに苦労する小説です。長編ということもあって物理的にもそうでしたが、内容的にも読み終わるまで相当時間がかかりました。こういう本は久しぶりです。

著者の中村文則氏が、宇宙の誕生や生命の誕生、素粒子などの物理学、仏教をはじめとする宗教、それに途上国の貧困の問題といったテーマごとに現在分かっていることを自分なりに整理して、開陳する部分がこの本の大半を占めます。

ストーリー自体は複雑な出自を持つ男女数人が中心となり、カルト的な教団がテロを起こすよう(公安警察にそそのかされ)仕組まれていき、最後はその計画が破綻する、というそれだけです。感情移入をしたくなるような人物が出てこないのも特徴的です。

小説の最後の方で、カルト教団とは別の宗教集団の創設者が亡くなる間際に残す言葉が、どうも中村氏の最も言いたいことだと思います。要約すると、自分の人生を生ききろう、多様性が大切ということらしいですが、これだけのことを書くために、果たして長い説明とリアリティの乏しい設定が必要だったのかと疑問に思います。

貧しい国の人々にもインターネットが行き渡れば世界が変わる、という「システム」のくだりは、福井晴敏さんの「人類資金」のテーマそのものだったのは、どうしたことでしょうか。

私は以上のように感じ、アマゾンのレビューでも低い評価が多くて「自分だけじゃない」と安心したのですが、ネットを見ていると、「純文学とはこういうものなんだ」という意見もありました。それだったら、私は純文学とは縁のない人間ということなのでしょうが、ドストエフスキーの「カラマーゾフの兄弟」は高校生の頃に読んで、大変な感動を受けました。中村氏をドストエフスキーを比べるのは乱暴過ぎますが、何だか釈然としない思いです。

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keitoshu: 千葉県に住む男性です。好きなクラシック音楽や読書、食べ歩きの思い出などを書いていきます。