ポーランドのピアニスト、ピョートル・アンデルジェフスキは好きなピアニストの一人です。これまでにバッハやモーツァルト、ベートーヴェンなどを聴いて、硬質で美しい音色ながら、一癖のある解釈が私の好きなミケランジェリやポゴレリッチにどこか通じるところのある人(この2人ほど極端なところはありませんが)と認識しています。
今回の新録音(ワーナーミュージック)は2017年7月、バーデン・バーデン祝祭劇場での録音です。ヨーロッパ室内管弦楽団を弾き振りして、モーツァルトのピアノ協奏曲第25番ハ長調K.503とピアノ協奏曲第27番 変ロ長調K.595を収めています。
アンデルジェフスキのモーツァルトの協奏曲を、同じレーベルにこれまでに21番&24番(シンフォニア・ヴァルソヴィア)、17番&20番(スコットランド室内管弦楽団)と録音してきて、今回3枚目となります。前回の17&20が2005年の録音だったので、本当に久々の録音となりますね。
一聴して演奏に磨きがかかり円熟味が増しているのが分かります。指揮も、今では当たり前ですがピリオドアプローチを取り入れ、音価を短く取り、ビブラートを控えめにしているのがわかります。ただ昔の演奏に慣れている身にはいつ聴いても少し違和感があるのは否定できません。大分慣れてはきたのですが。
ピアノはいつもながらとても音が美しく、一音たりとも気を抜かない意思的な演奏ぶりです。25番は、この意思の強さのようなものが少し伝統的な奏法から外れている気もしました。例えば同じ音が2つ続くようなところで、ウィーン流だと後の音を少し力を抜いたりするのですが、この演奏ではそういうことがないので、少し「非ヨーロッパ的」な感じを受けるのです。
どちらかというと27番の方が私には合いました。オケの導入部の澄み切った心境はなかなか聴けないものです。ピアノが入っても、彼岸の境地をかなりよく表現していて、オケとの室内楽的な掛け合いも見事なものです。第2楽章の忍耐、第3楽章の魂のダンスも曲想をとらえきっていて見事でした。
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