何とも不思議なテイストの小説を読みました。2017年「月の満ち欠け」で直木賞を受賞した佐藤正午さんの「鳩の撃退法」です。言葉遊びが多い点や不思議なストーリー展開は、ちょっと伊坂幸太郎さんを連想させました。
佐藤さんは1955年、長崎県佐世保市生まれ、現在も佐世保在住の作家です。
地方都市に暮らす津田伸一は昔直木賞を受賞した作家で、今は落ちぶれてコンパニオンの女性を車で送迎する仕事をしています。あるとき懇意にしていた古書店主の老人が亡くなり、形見のキャリーバッグを受け取ったところ、中に入っていたのは、古本のピーターパンの本、それに3千万円をこえる札束でした。しかしこの3千万円のうちの一部を使うとそれが偽札だとわかります。1年前に起きた1家3人の失踪事件も絡み、町の裏社会も巻き込んだ大騒ぎになるのです。
こう書くと、ミステリー的な要素の強い小説と思われるかもしれませんが、全然違います。言葉遊びが多く、そういうのが好きな人には受け入れられないでしょう。作品の中で、津田が起こった出来事を小説として書いていく、というメタフィクションの手法も取り入れられ、技巧的といえばそうなのかもしれません。
とにかく独特な小説です。繰り返しになりますが、伊坂幸太郎さんのような作風が好きな人には受け入れられるのではないでしょうか。
私は、正直に言うと、もう少し真面目で骨太な小説の方が好みではあります。が、この作家の技術、力量はよく分かりました。
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