カール・オルフの「カルミナ・ブラーナ」は、冒頭の「おお、運命の女神よ」がテレビなどでもしょっちゅう使われるので、曲名を知らなくても、冒頭を聴けば「ああ、この曲か」と分かるくらい有名です。冒頭だけがやたら有名ですが、全曲を通して聴きやすく、華やかなオーケストレーションや合唱の面白さがとても魅力的な作品です。
カルミナ・ブラーナ自体は、19世紀にドイツ南部、バイエルン選帝侯領内のベネディクト会のボイエルン修道院で発見された詩歌集です。オルフは、この詩歌集に基づいて世俗的カンタータを1936年に完成させました。
詩歌は約300編に上り、ラテン語などで書かれています。内容は若者の怒りや恋愛の歌、酒や性、パロディなどの世俗的なものが多く、11世紀から13世紀に書かれたと推測されています。
カール・オルフ(1895~1982)はドイツ・ミュンヘン生まれの作曲家。「カルミナ・ブラーナ」に代表されるように、和声、旋律、リズムすべてが単純、明快で力強さにあふれています。打楽器が大活躍するのも彼の作品の特徴です。
曲は、混声合唱、少年合唱、ソプラノ・テノール・バリトンのソロ、大編成のオーケストラという大きな編成で、私も何度かコンサートで聴いたことがありますが、これだけの人数が舞台上に並んだ様子は壮観です。演奏時間は約1時間。
この曲は、オイゲン・ヨッフム指揮ベルリン・ドイツ・オペラ管弦楽団(1967年録音、DG)にとどめを刺します。この演奏を評するのに「プリミティブ(原始的)な迫力」とよく言われますが、その通りに中世のドイツ民衆の活気を表すかのように、活力に満ち溢れた名演です。
私は、ヨッフムというと、晩年のEMIにベートーヴェン、ブラームス、ブルックナーを録音していた頃にクラシックをちょうど聴き始めの頃で、穏やかな巨匠というイメージを長らく持っていました。
しかし、その頃の録音を後から聴いてみると、結構テンポやアゴーギクを動かす、ドラマティックな演奏をしていて、なかなか表現主義的な指揮者だったのだと思っています。ベートーヴェンやブラームスでもメリハリの聴いた、今で言うなら「エッジの利いた」演奏をしています。
そういう人ですので、この「カルミナ・ブラーナ」のような曲は打ってつけだったのでしょう。重厚なオケを豪快に鳴らしつつ、かつ細部にあいないなところのない演奏です。どこも手を抜いたようなところがなく、気合のこもったハイテンションのまま、全曲を演奏しきります。ライヴだったなら、卒倒しそうなテンションです。
ベルリン・ドイツ・オペラ管弦楽団と合唱団、シェーネベルク少年合唱団も明快な演奏でこたえます。ソリストはソプラノのグンドゥラ・ヤノヴィッツ、テノールのゲルハルト・シュトルツェ、バリトンのフィッシャー=ディースカウの第一級の名人が巧すぎます。録音も今聴いてもなかなか優秀です。
この曲は実演で聴くと圧倒的な感銘を受けます。合唱を含め、かなり高度な技術が要求される至難な曲ですので、演奏会に乗ることはあまり多くはありませんが、この曲が国内オケのプログラムにあったら、ぜひ生で聴くことをお勧めします。
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