久しぶりに音楽カテゴリーの記事です。
フェルディナント・ライトナーがNHK交響楽団を指揮したブラームスをすべて集めたライヴ録音が、キングから発売されました。
収録されているのは、
交響曲第1番(1988年)、第2番(83年)、第4番(83年)、ハイドン変奏曲(83年)、ドイツ・レクイエム(79年)です。
第3番のみ欠けていますが、N響とは演奏しなかったとのこと。ドイツ・レクイエムの歌は曽我栄子(ソプラノ)、芳野靖夫(バリトン)、国立音楽大学合唱団です。
ライトナーは1912年生まれ。この年は指揮者の当たり年(?)で、同い年にはギュンター・ヴァント、エーリヒ・ラインスドルフ、シャーンドル・ヴェーグ 、セルジュ・チェリビダッケ、イーゴリ・マルケヴィチ 、クルト・ザンデルリング、ゲオルク・ショルティなど、綺羅星のごとく名指揮者の名前が並びます。
そんな中で、ライトナーはベルリン生まれで、歌劇場で叩き上げたドイツ正統派の巨匠です。NHK交響楽団に数多く客演したことで、日本のファンには馴染みのある指揮者ですね。私は80年代頃に、テレビ番組のN響アワーくらいでしか見たことがないのですが、猫背でいかにも好々爺といった感じの風貌で、比較的分かりやすい棒を振るという印象がありました。この頃のN響は、ウォルフガング・サヴァリッシュ、オトマール・スウィトナー、ホルスト・シュタインといったドイツ人名誉指揮者3人衆がいたので、それに比べると、ライトナーは名誉指揮者にもなっていないし、ヴェテランではあるけれど、ハインツ・ワルベルクなどとともにやや2線級の人なのかな、と失礼ながら思っていました。
レコーディングはあまり多くないですね。有名なのは、ウィルヘルム・ケンプのベートーヴェンピアノ協奏曲全集の伴奏(DG、ベルリン・フィル)でしょうか。メジャーレーベルでの交響曲のスタジオ録音はなく、私は以前にシュトットガルト放送響だったかとのライヴ録音でブルックナーの交響曲第6番のCDを買ったのですが、1回聴いただけで、ほとんど印象には残っていません。ただ、ネットでは彼のドイツ物にはコアなファンがいるようですね。ウィキペディアには「玄人受けする正統派の音作りで評価された」とあります。
まだ第1番しか聴いていないので、第1だけの感想を書きます。
冒頭から力むことなく柔らかめに始まります。ティンパニの連打も抑え目。昔はこういう演奏は嫌いだったのですが、今はそれほど嫌ではありません。というか、少し聴いただけで、管弦のバランスにとても気を使っているのが分かります。といって神経質な感じは皆無で、あくまでも自然体なのです。
主部に入っても、堂々たるインテンポ。ここでも楽器のバランスがとても良く、対旋律などもうまく生かしています。このときライトナーは76歳ですが、老成したようなところはなく、再現部に入るところなどではかなり気合のこもった盛り上がりを見せます。
第2楽章はとくに良かったです。サントリーホールということもあってか、N響の弦がとても柔らかい、繊細な音を出しています。テンポはやはり遅めで、慎重に慈しむように紡いでいきます。後半のヴァイオリンソロの細身の音は徳永さんでしょうか。弦と管の絡み合いもとても滑らかです。正直、テレビで見たやや無骨な指揮ぶりからは、こうした流麗な音楽が出てくるとは想像できませんでした。
第3楽章も丁寧の一言。第4楽章もじっくり進みますが、ここでも楽想間の受け渡しがとてもスムーズです。そして後半の盛り上がりではテンポを大きくあおり、 N響も触発されたのか必死で弾いているようすが目に浮かびます。フィナーレの後半はライヴらしくかなり熱い演奏です。ですが、決して絶叫型の演奏ではなく、細部までコントロールされているのは流石です。本当の実力を持った職人指揮者が極めた境地といえるでしょう。
曲が終わった後のブラヴォーはなし。フィナーレなどかなり白熱した演奏だったのですが、やはりこの指揮者は大向こう受けするような人気はなかったのかもしれません。とても良い指揮者だと思いますが。でもそういうところをコアなファンは好むのでしょうね。
正直、第1番でお腹いっぱいになったので、きょうはこの辺で。
その他の曲も期待が持てますので、また機会があったら書いてみたいと思います。
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