佐藤愛子さんの「血脈」上・中・下巻を1ヶ月ほどかかって、ようやく読み終えました。
「九十歳。何がめでたい」が大ヒット中の佐藤愛子さんですが小説は初めて読みました。不勉強にして、お兄さんがサトウハチローさんだということも知らなかったです。
「血脈」は、佐藤愛子さんの父親を中心に、大正~昭和にかけて三代にわたる佐藤家の家族の奔放で個性的な人生を描いた(もちろん自分の描写もあります)自伝的小説です。
父親の佐藤紅緑(洽六)は小説家で、「ああ玉杯に花うけて」などの高い理想を説く少年少女向け小説でベストセラー作家だった人です。しかし性格がかなり変わっていて、情念に引きずられ、女優志望の若いシナのストーカーのようになり、ついに二番目の妻にします。洽六とシナの間の2番目の娘が、佐藤愛子さんです。
洽六と前妻のハルとの間の長男が八郎(後の大詩人、サトウハチロー)です。八郎の少年時代は絵に書いたような不良少年で、家庭の不和から悪いことばかりする様子が描かれます。サトウハチローといえば、「リンゴの唄」や「ちいさい秋みつけた」、詩集「おかあさん」などの繊細な詩が多いですが、そうした詩からは想像できないような、私生活では父親に増して奔放な生活を送りました。
八郎の弟の節、弥、久と4人の兄弟とも不良でわがまま、努力するということができない性格は共通しています。それぞれが問題を起こすたびに、父親の洽六を悩ませ、その懊悩が日記を引用する形でよく出てきます。日記は旧仮名遣いなので、少し読みづらかったですが、当時の世相などがうかがわれて興味深かったです。
とにかく長い小説ですが、久しぶりにずっしりとした読み応えのある小説を読んだ気がします。
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