クラシック音楽好きなら誰でも1度は耳にしたことのある、とても有名な曲です。曲自体は、フランス近代の大作曲家、モーリス・ラヴェルがピアノ曲を先に作曲し、後にラヴェル自身が管弦楽曲に編曲しました。2つのうちでは管弦楽曲の方が私はなじみ深いです。ピアノ版は朴訥な感じ、管弦楽版は淡い色彩感が特徴です。
「パヴァーヌ」は16~17世紀にヨーロッパの宮廷で普及していた舞踊のこと。ラヴェルによると「亡くなった王女のための葬送の哀歌」ではなく、「昔、スペインの宮廷で小さな王女が踊ったようなパヴァーヌ」を意図して作った曲だそうです(ウィキペデキアより)。
ピアノ曲はパリ音楽院在学中の1899年に作曲された、ラヴェル初期を代表する作品です。管弦楽版は1910年に編曲され、1911年に初演されました。「オーケストラの魔術師」の異名通り、比較的小規模な楽器編成を使いながら、いにしえの宮廷を思わせる淡いセピア色の風景を感じさせる、素晴らしい編曲になっています。
この曲自体は自ら手に取って聴きくとはないんですが、ふと流れてくると(それくらいポピュラーなメロディーです)、思わず耳を澄ませてしまいます。私はふだんラヴェルをはじめ、フランス音楽はあまり積極的には聴かないのですが、この曲とドビュッシーの「牧神の午後への前奏曲」は別格です。両曲ともそれだけメロディーやオーケストレーションが素晴らしいのですね。いずれも人気曲であるだけあります。
名盤も多いですが、最初に聴いたカルロ・マリア・ジュリーニ指揮、ベルリン・フィルによる演奏が忘れられません。フォーレの「レクイエム」のCDの余白に入っていたものです。いろいろな演奏を聴きましたが、ジュリーニの演奏はこの曲の持つ「揺らぎ」というか、「たゆたい」を一番うまく表現しているように感じています。フランスものにベルリン・フィルはどうかと思ったのですが、どうして、まったく嘘くさくなく全員がフランス人になりきっているように感じます。超一流の楽団はやはり違いますね。
次点としてアンドレ・クリュイタンス指揮パリ音楽院管弦楽団の録音は定評があります。この時期のパリ音楽院管弦楽団しか持っていなかった実にフランスらしい、洗練された音がまず耳をとらえます。そしてクリュイタンスの指揮は落ち着いていて気品に満ち、ラヴェルのスコアから精妙きわまりない精巧な響きを引き出しています。
クリュイタンスとパリ音楽院管弦楽団は来日ライヴのベルリオーズ「幻想交響曲」などを聴いても、むせ返るようなフランスの香りを感じさせてくれて、私としては「フランス的」というイメージに最も合う指揮者とオーケストラです。この曲以外にも、たくさんラヴェルの作品を録音していますが、どれも今でも通用する素晴らしい名演揃いです。
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