きょうは猛暑で、朝の天気予報では東京の最高気温は体温超えの37度(!)でした。
そんな暑さにも負けない?、重苦しい交響曲です。
ベルギー出身でフランスで活躍したセザール・フランク(1822~1890年)が作曲した交響曲ニ短調作品48は、広義のフランス音楽の中で代表的な交響曲であるばかりか、19世紀後半の最も重要な交響曲の一つです。
循環形式を用いた構成感の強い曲です。ベルギー生まれであることからドイツ圏の影響も大きく、敬虔な宗教観や分厚い和声、重厚な音響などから「フランスのブルックナー」などと評されることもあり、この例えは言い得て妙だなあと感じます。
ブルックナー的な晦渋さを持ちながら、19世紀後半の音楽らしく、音響的にはワーグナーを強く感じさせる部分があります。ただし、ワーグナーのような強い意思の力のようなものは感じません。どんな瞬間も劇場的なワーグナーとは違い、この曲はあくまでも内面を見つめる透徹さがあります。まさに「フランスのブルックナー」といわれるゆえんでしょう。
3楽章構成で、演奏時間は約40分です。堂々たる交響曲ですが、演奏効果の面で今一つのところがあるのか、コンサートであまりメインの曲に持ってきているのを見たことはありません。内面的な表出力が一番問われると思います。やはり「通好み」の曲ではないでしょうか。
この曲の演奏は、フランス的な演奏と、ドイツ風の重厚さな演奏に大きく分かれると思います。フランス風の代表がアンセルメ、ミュンシュ、モントゥー、デュトワなど。ドイツ風の演奏としてはフルトヴェングラーやジュリーニなどが挙げられると思います。
きょう紹介するエルネスト・アンセルメ指揮スイス・ロマンド管弦楽団の録音(1961年、デッカ)は、フランス風の代表格といっていいでしょう。管楽器など古雅な音色がたまりません。
アンセルメとスイス・ロマンド管弦楽団といえば、ステレオ初期にデッカに大量の録音をしました。フランス音楽がメーンですが、ベートーヴェンやブラームスなど独墺系のレパートリーもたくさん録音しました。
英デッカの録音の良さも手伝って、当時ベストセラーになったようです。ただ1968年に来日したときの彼らの演奏はあまり評判が良くなく、「アンセルメ、スイス・ロマンドの名演は、デッカの録音の魔術による」と評する評論家もいたそうです。
もちろん私は実際に聴いてみたわけではないので、彼らの本当の演奏がどうだったかは、今となってはわかりません。ですが、残された録音はどれも名演だと思っています(さすがに、独墺系のレパートリーでは少し違和感を感じることもありますが)。
一聴して分かる特徴は響きが重苦しくないことです。弦の人数が少なめなのでしょうか、管楽器が結構聴こえます。フランス風の楽器(バソンなど)を使っているのでしょう、独特な響きが耳に残ります。流麗というよりはむしろ無骨な手触りですが、「フランスのブルックナー」と言われるこの曲には合っていると思います。
解釈はオーソドックスなもので、循環主題の性格の描き分けもきちんとなされていますし、各部分のテンポも実に的確だと感じます。音のドラマにも不足はありません。ソロの技術やアンサンブルは現代に比べると劣りますが、実に丁寧に演奏している印象です。
第2楽章の持つ静謐な宗教観が私は大好きなのですが、この演奏では冒頭のハープと弦のピチカートの部分から敬虔な雰囲気がすごく出ていると思います。信仰の告白のようなオーボエやバソンなど木管のソロも、素朴な音色が宗教的な雰囲気にマッチしていると思います。イメージとしては大都市の大聖堂ではなくフランスの田舎町の教会を思わせるような演奏です。
このCDでは、これもフランスの代表的な交響曲であるサン=サーンスの交響曲第3番「オルガン」が併録されているので、お得感があります。もちろん、こちらもアンセルメ、スイス・ロマンドならではの名演です。
フランクの交響曲はいっときハマッていろいろなディスクを聴いた曲で、ジュリーニなどほかにも良い演奏がありますので、また機会があれば書いてみたいと思います。
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