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巨匠2人、がっぷり四つの名演 ドヴォルザークのチェロ協奏曲 ロストロポーヴィチ(Vc)、ジュリーニ指揮ロンドン・フィル

アントニン・ドヴォルザーク(1841~1904年)のチェロ協奏曲は、交響曲第9番「新世界より」と並ぶドヴォルザークの代表作の一つで、チェロ協奏曲の分野の最高峰でしょう。この曲を聴いたブラームスは「このような協奏曲を書けることになぜ気づかなかったのだろう。気づいていれば、とっくに自分が書いていただろうに」と嘆息したといいます。

ニューヨーク・ナショナル音楽院長として赴任したアメリカから、チェコへ帰国する直前の1894年から1895年にかけて作曲されました。ボヘミアの音楽と黒人霊歌やアメリカ・インディアンの音楽を融和させた作品として知られています。
第1楽章のほの暗い冒頭から、ノスタルジックな雰囲気に惹きこまれます。第2主題は有名なものでドヴォルザークが書いた中でも名旋律の一つ。第2楽章はボヘミアの夕暮れを思わせる
懐かしさいっぱいの音楽。第3楽章も土臭い、何ともいえない郷愁にあふれています。
全曲通じて、チェロが大活躍するのはもちろんですが、オーケストラ部分も大変充実していて、木管などのソロもたくさん出てきます。チェリストだけでなく、オーケストラもきわめて重要な協奏曲といえます。

チェロ奏者の最も重要なレパートリーであるため、録音も多いですが、私はムスティスラフ・ロストロポーヴィチのチェロ、カルロ・マリア・ジュリーニ指揮ロンドン・フィルハーモニー管弦楽団の録音(1977年、EMI)盤が一番好きです。超重量級の巨匠2人ががっぷり四つに組み合った巨大な音楽です。あまりにも構えが大きすぎるという人もいると思いますが、この圧倒的な存在感には効しきれない魅力があります。

第1楽章の序奏からジュリーニが思い入れたっぷりの遅いテンポでオケを鳴らします。チェロが入ってくるところの気迫もかなりのもの。ロストロポーヴィチのチェロは、ドラマティックで歌い方がスラブ的というか粘っこいのが特徴です。テクニックも完璧です。第2主題ではぐっとテンポを落として、ドヴォルザークの名旋律をここぞとばかりに歌い上げます。

第2楽章はロストロポーヴィチの胸に迫るチェロの音色が素晴らしいです。第3楽章もロストロポーヴィチのチェロはきれいごとではなく、「切れば血の出るような」とでも形容したいような迫力です。ジュリーニもソロを丁寧にサポートしつつ、分厚い響きで情熱的な演奏をしています。

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keitoshu: 千葉県に住む男性です。好きなクラシック音楽や読書、食べ歩きの思い出などを書いていきます。