シューベルトのピアノ・ソナタ第13番 イ長調 D.664は、演奏時間20分弱の小規模なソナタですが、とても美しい作品で、ときどき聴きたくなるピアノ曲の一つです。
1819年の夏、シューベルトが21歳の時の作品です。シューベルトのイ長調のピアノ・ソナタだと、後期の大作、第20番が有名ですが、あちらを「イ長調大ソナタ」、こちらを「イ長調小ソナタ」とも呼ぶそうです。
曲は3楽章構成です。
第1楽章はアレグロ・モデラート。木々の間を抜けるそよ風のような爽やか第1主題は一度聴いたら忘れられないほど印象的です。穏やかな表情を持っているものの、どこか儚げで不安定な瞬間を垣間見せながら、あくまでも自然に音楽は流れていきます。
第2楽章はアンダンテ。夢見るような美しい音楽です。
第3楽章はアレグロ。駆け下りてくるような下降音型で始まります。リズミカルな旋律はモーツァルトを連想させますが、懐かしいようなメロディーはやはりシューベルトならではのものです。
いろいろ優れたCDが出ていますが、ラドゥ・ルプーのものは、シューベルトに相性の良いピアニストらしく、実に繊細で美しい演奏です。陰影も豊かで、テクニックも完璧。まずは申し分のない録音です。
バレンボイムのも、この曲への愛着が感じられる、良い演奏です。若い頃と違って、肩の力の抜けた親しみやすさがあります。
そのほかでは、ケンプは1つ1つの音を慈しむように弾いています。内田光子はモノトーンの心象風景のような手触り。
この曲をわざわざ録音するようなピアニストは、曲に愛着があるに違いなく、それなりに皆特徴のある演奏をしています。
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