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作品そのものに語らせた名演 アンタル・ドラティのバルトーク「管弦楽のための協奏曲」

前にアンタル・ドラティ指揮ロイヤル・コンセルトヘボウ管弦楽団のスメタナ「わが祖国」を紹介しました。(ドラティ「わが祖国」の記事

この時期のドラティ・コンセルトヘボウの組み合わせは素晴らしく、同じフィリップスレーベルに録音したバルトークの「管弦楽のための協奏曲」も大変な名演です。私はこれとカラヤン・ベルリンフィルがあれば、ほかは要らないと思います。「わが祖国」は1986年の録音でしたが、「管弦楽のための協奏曲」は1983年の録音です。

バルトーク・ベーラ(1881~1945年)はハンガリーの生んだ大作曲家です(ハンガリーは名前を日本と同じ姓・名の順で表記するので、こう書いたのですが、西欧風に書けばベーラ・バルトークですし、その方が呼びやすいですね)。

「オケコン」の通称で知られるこの曲は、バルトークの代表作です。難解なところがなく、とにかく聴いていて楽しい曲なので、コンサートでも良く演奏されますし、CDもたくさん出ています。

1943年当時、ボストン交響楽団の音楽監督だったクーセヴィツキーが依頼して作曲されました。当時バルトークはアメリカに移住していましたが、健康状態が悪化して作曲意欲を失っていたそうです。クーセヴィツキーはそんなバルトークを励まそうとして作曲を依頼したとも伝えられています。

いずれにせよ、この作品はバルトーク晩年の傑作となりました。バルトークはこの曲を書いてほどなく、1945年に亡くなりました。

曲は5つの楽章からなります。協奏曲という名が付いている通り、各楽器をソロ楽器のように扱ったり、トゥッティと室内アンサンブルが交錯するような合奏協奏曲のような構造をとっています。

ドラティの演奏は、「わが祖国」と同様に、作品そのものに語らせることで、作曲家の意図したところをよく伝えているように感じます。コンセルトヘボウがまた良いですね。この時期のコンセルトヘボウは本当に素晴らしく、ソロも上手ければ、合奏になっても響きがごちゃ混ぜにならず、コントロールされた響きになっているところがすごいです。もちろんドラティの指揮によるところも大きいのでしょうが。

ドラティの特徴であるリズム感の良さが、切れ味の鋭い作風によく合っています。

第1楽章「序章」での何か、巨大なものが動き始めるような開始から耳を引き付けられます。第2楽章「対の提示」でのコミカルな表現ではコンセルトヘボウの管の上手さが光ります。第3楽章「エレジー(悲歌)」の悲痛さも心を打ちます。フィナーレの後半ではコンセルトヘボウの力を生かして、圧倒的なフーガを構築します。

どんなに盛り上がるところでも、常にオケの響きがコントロールされているところに、ドラティの職人芸的な上手さを感じます。

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keitoshu: 千葉県に住む男性です。好きなクラシック音楽や読書、食べ歩きの思い出などを書いていきます。