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とにかく楽しい交響曲~ハイドン「軍隊」の名盤

フランツ・ヨーゼフ・ハイドン(1732~1809年、オーストリア)はいわずと知れた「交響曲の父」。番号付きだけで104曲の交響曲を作りました。

後期の交響曲がよく演奏され、題名の付いた曲では、第88番「V字」、第88番「V字」、第101番「時計」、第88番「V字」、第94番「驚愕」、第101番「時計」、第103番「太鼓連打」、第104番「ロンドン」などが知られています。その中で「軍隊」は第100番ト長調の曲で、私が最も好きなハイドンの交響曲の一つです。

「軍隊」の愛称は、トルコ軍楽器のトライアングル、シンバル、大太鼓が第2楽章と終楽章の最後に使われることによります。

ハイドンの交響曲は大体パターンが決まっていて、ソナタ形式の第1楽章、ゆったりした楽章、メヌエットとトリオ、快速のフィナーレの4楽章構成です。クラシック初心者にはとっつきやすく、私もハイドンやモーツァルトからクラシックの交響曲に馴染んでいきました。しかし、少し聴き込んでマニアックになっていくと、ハイドンなどは物足りなくなってしまい、離れる時期がありました。その後、また中年になって、あらためてハイドンの曲を聴くと、「なんて楽しんだろう」と思いました。

特にこの「軍隊」は円熟期の名作で、第1楽章の厳かさや第2楽章の親しみやすいメロディーなど魅力満載です。オットー・クレンペラーが巨大な名演を残したのも、この曲にはああした演奏を受け付ける器の大きさがあるのではないかと考えます。

亡くなった岩城宏之さんはハイドンほど演奏が難しい作曲家はいない、と著書の中で書いていました。各声部が複雑に入り組み、少しでも油断すると取り返しの付かないことになってしまうというようなことを書いていました。

実際、ハイドンのCDは数多くありますが、なかなか理想的な演奏には巡り合えません。ジョージ・セルやフリッツ・ライナーは好きなのですが、惜しいことに「軍隊」は録音していません。そんな中、前述のクレンペラー、ブルーノ・ワルター、それにニコラウス・アーノンクールの演奏を挙げたいと思います。

クレンペラー指揮ニュー・フィルハーモニア管弦楽団

1965年、晩年の録音です(EMI)。クレンペラー、ニューフィルハーモニアのハイドンは、以前は88番、92番、95番、98番、100番、101番、102番、104番が3枚組のCDに収められて販売されていましたが、現在は廃盤のようです。

その代わり、「軍隊」と「時計」が入った1枚物があるようです。

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昔から有名な演奏です。故・宇野功芳氏も激賞していました。

演奏は、クレンペラーらしく遅いテンポで踏みしめるような、風格のある音楽です。ただ単に巨大なだけでなく、リズムに躍動感があり、アンサンブルの見通しが良く、フレージングもきっちりしているのが、かえって現代風でもあります。ハイドンならではの楽しさも欠いていません。「ベートーヴェン風」とでも形容したくなる立派さと持ちながら、作品本来の魅力を存分に打ち出した稀有の名演といえます。

ワルター指揮コロンビア交響楽団

これも定評のある名盤。1961年の録音(ソニー)で、「V字」との組み合わせです。

ワルターらしく、ウィーン風の優雅な演奏です。クレンペラーを「剛」とすればワルターは「柔」といえます。といって決してナヨナヨしているわけではなく、テンポもリズムもきっちりしているのは彼のモーツァルトやベートーヴェン同様です。古典派作品への節度が感じられます。いつもながら小編成のコロンビア交響楽団の動きが機敏で、低弦の動きなども克明に聴き取れるのもうれしいところです。

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アーノンクール指揮コンセルトヘボウ管弦楽団

1986年の録音(テルデック)。アーノンクールらしく、随所に仕掛けのある演奏で、楽しさでいったら、これが一番でしょう。コンセルトヘボウが抜群にうまく、アーノンクールの意図を100%生かした名演を成し遂げています。

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keitoshu: 千葉県に住む男性です。好きなクラシック音楽や読書、食べ歩きの思い出などを書いていきます。