「八日目の蝉」や「ツリーハウス」で面白いと思った角田光代さんのロングセラー小説ですが、少し読み通すのが辛かったです。文教地区での幼稚園、小学校受験などのエピソードを通じた5人の女性と子どもの絡み合いを描いていくのですが、5人の性格の描き分けが前半なかなか頭に入らなかったのと、登場人物の心理描写が延々と続き、ストーリー展開がやや単調に感じました。
刊行されたのは2008年で、物語の舞台は1996年から2000年までです。1999年の文京区幼女殺人事件、いわゆる「お受験殺人」をモチーフにしているのだと、朝比奈あすかさん(作家)の解説に書かれています。
子どもを介して出会った5人。性格は読み進めていくと、だんだんはっきりとしてきます。優柔不断な主婦、過去に引きこもりの経験がある主婦、天真爛漫で金にルーズな主婦、活動的でお洒落な主婦、不倫中でセレブな主婦…。
はじめの頃は一緒に仲良く行動していた彼女たちですが、子どもの「お受験」をきっかけに、亀裂がどんどん広がっていきます。互いに疑心暗鬼にとらわれる心理描写などはうまいものです。ただ、5人の心理描写が延々と続くので、どうしても途中飽きてきます。
おそらく都心の広尾とか白金あたりが舞台と思われますが、都心の買い物環境などの生活感もリアリティーを持って描かれています。マンションや家具、服装や小物類、夕飯の献立など、細かいところへのこだわりは、角田さんは得意なのでしょうね。
最終章では、5人それぞれが新しい道を歩き始める姿が描かれます。ここに至ってようやくホッとしました。
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