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常設トリオの強み メンデルスゾーン「ピアノ三重奏曲集」 ボザール・トリオ 

time 2017/07/05

メンデルスゾーンのピアノ三重奏曲は2曲あります。どちらも古今のピアノ・トリオの中では比較的、演奏頻度の低い曲かもしれませんが、どちらもメンデルスゾーンらしいロマンティックな名曲で、聴くほどに味わいが増します。

第1番ニ短調 作品49は、1839年、メンデルスゾーン30歳の時の作品。その年の秋に、発見されて間もなかったシューベルトの交響曲第8番「ザ・グレート」などと初演されました。ピアノの達人だったメンデルスゾーンらしく、ピアノパートは高度な技巧を必要とします。この曲を聴いたシューマンは「ベートーヴェン以来、最も偉大なピアノ三重奏曲だ」と表しました。4楽章構成。

第2番ハ短調 作品66は、ヴァイオリニストのルイ・シュポーアに献呈されました。4楽章構成。円熟期に書かれただけに、1番よりも内省的でドラマティックな要素が強まっています。

ボザール・トリオはアメリカの常設の団体ということで、何となく軽く見られがちですが、臨時にソリストが3人集まってやるトリオよりも、こういう団体の方が実力があったりします。この2曲も完熟の名演と評価したいです。さすがに名門のフィリップスの専属として、長年にわたり膨大な録音を残しただけのことはあります。

 

1985年(第1番)、1989年(第2番)の録音です。ピアノのプレスラーはじめ、各奏者が長いキャリアを通じて培った室内楽的な親密度とかけ引きを駆使して、どの瞬間もため息のでるような巧さを披露します。

このトリオでいつも感心するのは、作品の様式感を的確に把握していることです。楽器の練習だけでなく、作曲者や作品の研究をかなりしているのではないかと思います。

メンデルスゾーンはモーツァルト以後「歌うアレグロ」が書けた唯一の作曲家と言われています。第1番でボザール・トリオはこうしたモーツァルトのような軽やかさを表現しています。それとともにやはりモーツァルトの時代とは異なる、ロマン派の要素もしっかりと打ち出しているのは流石です。

第2番では、シューマンやブラームスに連なるようなロマンティックで幻想的な曲想に合わせ、スケール豊かに、振幅の大きい表現を行なっています。特に緩徐楽章での激しい歌い方には惹き込まれます。

3人とも抜群のテクニックを持ち、なおかつ誰か1人が突出することはありません。素晴らしいトリオです。そうした中でも、アンサンブルの要所はピアノのプレスラーが引き締めているようです。

フィリップスの録音はデジタル初期のものですが、暖色系の自然でクリアな録音です。

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