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速めのテンポに込められた無限のニュアンス シューリヒト指揮ウィーン・フィルの「未完成」

time 2017/07/16

カール・シューリヒトの演奏を表す言葉を探していて、最近、まるで「水墨画」のような演奏だと思い付きました。

シューリヒトは、1880年にダンツィヒ(現在のポーランド・グダニスク)に生まれ、1967年にスイスで死去した、20世紀を代表する名指揮者の一人です。華々しい活躍をしたスターというよりは、どちらかと言うと通好みの渋い指揮者でしたが、今でも根強いファンがいる指揮者です。

演奏の特徴は、速めのテンポで一見淡々としていますが、そこに無限のニュアンスやひらめきが散りばめられています。即興性が豊かだといってもいいと思います。モーツァルトやベートーヴェン、ブルックナーなどの独墺系のレパートリーを得意とし、EMIやデッカにかなりの録音を残しました。近年はライヴ録音も多く発掘されています。

シューベルトの交響曲第8番ロ短調 Ⅾ759「未完成」は、2楽章までしか完成されなかった曲で、シューベルトの代表作であるばかりか、古今の数ある交響曲の中でも特に人気の高い作品の一つです。

シューリヒトの「未完成」は、タワーレコード・ヴィンテージ・コレクションから発売されたものが出ていて、モーツァルトの交響曲第35番「ハフナー」、ブラームスの交響曲第2番とともに、ウィーン・フィルとデッカに録音した3曲が2枚組のCDにまとめられています(ブラームスはモノラル)。

演奏は、決して速いとはいえませんが、淡々と進むので印象としては速く感じます。第1楽章の有名な第2主題も情緒連綿と歌うのではなく、若い頃を回想するような趣があります。ウィーン・フィルの魅力もよく生かされていますが、楽器のバランスは独特で、弦の対旋律や木管が良く聴こえます。淡々と進んでいき、展開部では壮絶なクライマックスを築きます。

第2楽章も天上世界のような美しい旋律を丁寧に紡ぎ出し、彼岸の境地を感じさせる味わいがあります。ウィーン・フィルの音色がものを言っています。無限に続くかのような時間に身を委ねているうちに、いつの間にか彼方に遠ざかるように曲が終わります。この後に続く楽章をシューベルトが書けなかったのも分かるような気がします。

「未完成」は有名曲だけに名盤も多く、シューリヒトの録音が最高というわけにはいきませんが、その味わい深さから、やはり独特な位置を占める演奏だと思います。

併録されているモーツァルトの「ハフナー」も名演です。速めのインテンポでぐいぐい進んでいく快適な演奏で、ここでもやはり楽器のバランスや対旋律の生かし方などに職人的な名人芸を見せています。

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